店主がとても大きな犬に会ったらしい。
我は聞いたときに耳を疑った。
犬はたいてい我らより大きいものだが、人間より大きい犬がいるとは知らなかった。
なんでも、店主が、柏の市街に用事があって出かけていたとき。
アーケードなる雨避け屋根がある場所で、とてもとても大きな動物に出会ったそうだ。
周囲に人だかりがあったため、最初は胴から後ろしか見えず、店主は鹿か、と思ったそうだ。
近づくと、立ち上がったら人間の背丈を越えるような、大きな犬であった。
グレート・デン、というのだそうだ。
触った毛並みは硬く、しっかりしていて、毛に光沢があったそうだ。
店主は思わず「鹿の皮みたい」と呟いて、周りの失笑を買ったそうな。
人を超えそうな大きさで、年齢はまだ8ヵ月だそうで、周囲のものもびっくりしていた。
その犬に限らず、大型の犬というものは気性が穏やかだそうだ。
人はなぜかと不思議がるが、我は気持ちがわかる。
体格的に、かなわないと思われるような大きさの生き物が近くにいたら、怖くておびえる。
自分が十分に対応できる、とわかっていれば、わざわざ警戒する謂れもない。
穏やかに生活していれば、食住間に合うのだから、無駄にほえる必要もない。
ただし、身動きできぬほど閉じ込められれば暴れるであろうがな。
暴れるには暴れる理由がある。それだけだ。
つまりはだ。
我がちょっとかまっても、その犬は我に対して怒らないだろう。
緊張するのは我らのほうであり、大きな動物の側ではないのだ。
人間も、我らにとっては、大きい動物である。
自分よりはるかにでかい、予測できない動きをするものを考えてみてくれ。
怖さがわかるだろう?
ほぐし処 ねこや
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